ロコモ予防・改善のカギ② ― 栄養編

👣 はじめに

先週よりロコモについてお話してきました。そもそもロコモとは(前回記事)

  →「ロコモ」って知っていますか? 〜ロコモコ丼じゃありません!〜

 

  →ロコモ度テストでセルフチェック! ― あなたは大丈夫?

 

       →ロコモ予防・改善のカギ① 運動編

 

ロコモティブシンドローム(ロコモ)の予防・改善において、運動と並んで欠かせないのが「栄養」です。
どれだけ適切な運動を行っても、材料となる栄養素が足りなければ筋肉も骨も回復・強化できません。

今回は、臨床現場でも重視される「筋肉と骨を支える栄養学」について詳しく見ていきましょう。

🥩 1. 筋肉を作る「タンパク質」の重要性

筋肉は、食事から摂取したタンパク質を材料に合成されています。
加齢とともに筋合成の効率は低下し、同じ量を食べても若い頃のように筋肉が維持できないことが知られています。

💡 推奨摂取量

  • 健康状態を維持するために必要なたんぱく質量は、対象者の身体の大きさや身体活動のレベルによって異なりますが、基本的には「体重×身体活動レベルに応じた数値」で計算できます。
  • 運動習慣がない人は「体重×0.95g」
  • 週1回以上の運動習慣がある人は「体重×1.6g」
  • 65歳以上の高齢者は「体重×1.0g」を目安にしてみましょう。

🍗 主なタンパク質源

食材

タンパク質量(約)

特徴

鶏むね肉100g

22g

低脂質・高タンパク

魚(鮭・サバ)100g

20g

EPA・DHAも豊富

卵1個

6g

アミノ酸スコア100

納豆1パック

8g

植物性タンパク+イソフラボン

牛乳200ml

6g

吸収の良い乳タンパク

🧃 2. プロテイン補助食品の活用と注意点

💬 「プロテインは必要?」

食事で必要量を摂るのが理想ですが、高齢者や食欲低下のある方では補助的にプロテインを活用するのも有効です。

🧈 タイプ別の特徴

  • ホエイプロテイン:吸収が速く、筋合成促進効果が高い(運動直後に最適)
  • カゼインプロテイン:吸収がゆるやかで、就寝前におすすめ
  • ソイプロテイン:植物性、脂質が少なく女性にも人気

⚠️ 腎機能への注意点

タンパク質摂取量が過剰になると、腎臓への負担が増すことが指摘されています。
特に以下の方は注意が必要です。

  • 慢性腎臓病(CKD)を指摘されている方
  • 高血圧・糖尿病などの持病がある方
  • 高齢で脱水傾向のある方

👉 プロテインを始める前に、血液検査で腎機能(eGFR・クレアチニン)を確認し、医師に相談するのが安全です。
また、水分摂取(1.5〜2L/日程度)を意識して、腎への負担を減らしましょう。

🦴 3. 骨を守る「カルシウム」と「ビタミンD」

🦷 カルシウム

骨の主成分であり、不足すると骨密度低下や骨折リスク上昇を招きます。

  • 推奨摂取量:600〜800mg/日
  • 食材例:牛乳・ヨーグルト・小魚・小松菜・豆腐

☀️ ビタミンD

カルシウムの吸収を助け、筋力にも関与します。

  • 食材例:鮭・サバ・いわし・きのこ類(特に干し椎茸)
  • 1日15分程度の日光浴でも体内合成されます。

👉 ビタミンDが不足すると、筋力低下・転倒リスク増加が報告されています。
日本人高齢者では、約7割が不足状態というデータもあります。

🥦 4. 骨代謝を支えるビタミンK・マグネシウム・亜鉛

  • ビタミンK:骨形成を促進(納豆・緑黄色野菜)
  • マグネシウム:カルシウムと協調して骨を安定化(豆類・海藻類)
  • 亜鉛:筋合成に必須(牡蠣・赤身肉・ナッツ類)

これらの栄養素は単体ではなく、バランス良く摂取することで相乗効果を発揮します。

🧍‍♂️ 5. サルコペニアと低栄養の関係

サルコペニア(加齢性筋肉減少症)は、運動不足+低栄養が原因の二大要素です。
タンパク質・エネルギーが不足すると、身体は筋肉を分解してエネルギーに変えるため、
筋力低下 → 活動量低下 → 食欲減退 → さらなる低栄養という悪循環に陥ります。

👉 栄養介入(特にタンパク質+ビタミンD補給)は、サルコペニア進行を防ぐ最も確実な手段の一つです。

🔄 6. 「運動 × 栄養」の相乗効果

運動による筋刺激があって初めて、摂取したアミノ酸が筋肉に取り込まれます。
つまり――

「食べるだけではダメ、動くことが筋肉を活かす」

が鉄則です。

🏋️‍♀️ 理想的なタイミング

  • 運動後30分以内にタンパク質摂取(プロテインや乳製品など)
    → 筋合成を最大化する「ゴールデンタイム」
  • 就寝前の補給(カゼインプロテインや牛乳)
    → 夜間の筋分解を抑制

また、リハビリや理学療法で筋活動を継続的に刺激することで、
栄養摂取の効果を最大限に引き出すことができます。

  •  

まとめ

  • ロコモ対策には「筋肉」「骨」「代謝」を支える栄養が不可欠
  • タンパク質の摂取を心がける
  • プロテイン補助は有効だが、腎機能に注意
  • ビタミンD・カルシウム・ビタミンKを意識して摂取
  • 運動療法と栄養介入は相互に作用し、効果を高め合う

💬メッセージ

ロコモは「足腰の病気」ではなく、「生活全体のバランスの病気」です。
食べること、動くこと、その両方を整えていくことが、何歳からでも可能な予防法です。
クリニックでは運動指導・リハビリに加え、栄養面からのアドバイスも行っています。
気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

2025年10月29日