肩こり~考えられる疾患や、治療

先日は肩こりの概要についてお話ししました。(こちら)

本日は具体的な疾患や、内服、リハビリ治療について触れたいと思います。

 


1. 整形外科領域の疾患

肩こりを訴える患者の多くは整形外科的な問題を抱えています。

  • 頸椎症(変形性頸椎症)

    加齢や負荷で椎間板や椎体に変形が起こり、頸部の慢性疼痛や可動域制限を引き起こします。神経根圧迫があれば腕のしびれや痛みも伴います。
  • 頸椎椎間板ヘルニア

    若年〜中年層にも多く、片側上肢の放散痛・しびれを伴う。肩こりとの区別は「神経学的所見の有無」で可能。
  • 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

    肩関節そのものの可動域制限と痛み。肩甲部〜頸部にかけて「こり感」を伴うことがあります。
  • 筋・筋膜性疼痛症候群

    トリガーポイント(筋硬結)が生じ、肩や頸部の限局的な圧痛と関連痛をきたす。

2. 婦人科領域

特に女性患者ではホルモンバランスの影響が大きいです。

  • 更年期障害:エストロゲン低下に伴う自律神経症状のひとつとして肩こりが現れます。
  • 月経関連症状:PMSや月経困難症で肩や背中のこり・痛みを訴えるケースあり。
  • 妊娠期・産褥期:姿勢変化やホルモン変動、授乳姿勢による負担が加わる。
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    3. 内科領域や眼科耳鼻科関連の疾患

    • 高血圧症:肩や後頸部の「重だるさ」を訴える患者あり。
    • 狭心症・心筋梗塞:典型例でなく、肩〜頸部痛として出ることがある。特に左側に多い。
    • 呼吸器疾患:肺尖部の腫瘍(パンコースト腫瘍)などは肩周囲痛で発症することがある。
    • 眼精疲労:調節力低下やドライアイなどが背景に。肩〜頸の筋緊張を助長。
    • 耳鼻科疾患:顎関節症や咬合異常も肩こり感の原因に。
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4. 神経・精神領域

  • 頸髄症:四肢のしびれや巧緻運動障害を伴う場合は精査が必須。
  • 自律神経失調症:交感神経過緊張による筋緊張増強。
  • 精神的ストレス・うつ病:肩こりは心身症状の一つとしてしばしば出現。
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5. 生活習慣要因

長時間のPC作業、スマホ姿勢、運動不足、冷え、睡眠不足。これらは「本態性肩こり」の大きな背景因子です。

 


 

検査の使い分け

症状や所見に応じて「どの検査を行うべきか」を選択します。

  1. 問診・身体診察でRed flagsがある場合

    → MRI(頸椎・胸部)、血液検査、胸部画像など速やかに。
  2. 神経症状がある(しびれ・筋力低下)

    → 頸椎X線、MRI。必要に応じて神経伝導検査、筋電図。
  3. 肩関節可動域制限・圧痛が主

    → 肩関節X線、超音波(腱板評価)。
  4. 全身症状(発熱・体重減少など)がある

    → 血液検査(炎症反応、腫瘍マーカーなど)、全身精査。
  5. 明らかな整形外科所見がなく慢性肩こりのみ

    → 上記検査などで特に問題がない場合。生活因子改善や保存療法を優先。
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ポイント整理

  • 鑑別診断の幅は広く、「整形外科疾患」に偏らず内科・婦人科・神経疾患も想定することが大事。
  • 検査は無差別に行うのではなく症状・所見に基づき取捨選択すること。
  • 本態性肩こりの診断には「除外のプロセス」が不可欠。

 

1. 薬物療法

肩こりに対しては「症状緩和」を目的とした薬物が中心です。根治的に治す薬は存在せず、患者さんの状態に合わせて使い分けます。

(1) 鎮痛薬(NSAIDs)

  • ロキソプロフェン・ジクロフェナク・セレコキシブなど
  • 炎症や痛みが強いときに短期間用いる。
  • ただし慢性肩こりでは炎症より筋緊張が主体であることが多く、効果は限定的。胃腸障害・腎障害・心血管系リスクに注意。

(2) 筋弛緩薬

  • エペリゾン・チザニジン など
  • 筋緊張の緩和を目的に用いられる。効果はあるものの眠気・ふらつきなど副作用にも留意。

(3) 外用薬(湿布・塗布薬)

  • NSAID含有パップ剤、温感・冷感タイプの外用薬。
  • 患者さんの好みや体質で選ぶ。

(4) ビタミン剤・循環改善薬

  • ビタミンB12(メコバラミン):末梢神経の修復に関与。しびれを伴う場合に処方されることがある。
  • 漢方薬:次回詳述します。
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2. 理学療法・リハビリ

薬物よりも「根本改善」につながりやすいのがリハビリ領域です。

(1) 温熱療法

  • ホットパック・温熱シート・入浴。血流を改善し筋緊張を和らげる。
  • 特に冷え性や寒冷曝露で悪化する肩こりに有効。

(2) 低周波・電気治療

  • 神経や筋に電気刺激を与え、鎮痛・筋緊張緩和を狙う。

(3) 牽引療法

  • 頸椎症などに伴う肩こりで、神経根圧迫が疑われる場合に一部有効。
  • 適応を見極める必要がある(急性期や不安定性のある頸椎では禁忌)。

(4) マッサージ・徒手療法

  • 筋緊張の緩和と血流改善。
  • 一時的効果は高いが、再発予防のためには運動療法と併用が重要。

(5) 運動療法(ストレッチ・筋力トレーニング)

  • 僧帽筋上部繊維をほぐすストレッチ、肩甲骨周囲筋(菱形筋・前鋸筋)の強化。
  • 「猫背改善エクササイズ」など姿勢修正が効果的。
  • 継続がポイント。
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3. 生活習慣の改善

肩こりは「日常の習慣病」とも言えます。

  • デスクワークの姿勢改善

    モニターの高さ調整、1時間に1回の休憩・ストレッチ。
  • 睡眠環境の見直し

    枕の高さ・硬さ。首が過伸展・屈曲しないポジションが理想。
  • 運動習慣

    有酸素運動(ウォーキング、スイミング)が血流改善に寄与。
  • 冷え対策

    特に女性では「肩甲部を冷やさない」工夫が有効。
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4. 心理社会的アプローチ

慢性肩こりでは「ストレス・自律神経の関与」が大きく、心身両面への対応が必要です。

  • 心理的ストレスの軽減

    マインドフルネス、呼吸法、ヨガなどリラクゼーション。
  • 行動療法的アプローチ

    「こりを悪化させる生活習慣」を自覚して行動変容を促す。
  • カウンセリング・精神科連携

    抑うつ・不安障害を背景に持つ患者では専門的対応が必要。
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5. まとめ

  • 急性〜亜急性期では薬物・物理療法で緩和。
  • 慢性期は 姿勢改善・運動療法・ストレス対策 が主役。
  • 治療は「患者さんの背景(年齢・性別・職業・体質)」を踏まえた多面的アプローチが重要。
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  • 次回は、漢方薬を中心とした治療について触れたいと思います。
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かなざわ整形外科・婦人科

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院長 金沢 正幸

医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会リハビリテーション医
日本整形外科学会リウマチ医
日本整形外科学会スポーツ医
日本医師会認定スポーツ医
日本体育協会公認スポーツドクター

※婦人科は女性専門医が診察にあたります。

 

2025年09月26日