インフルエンザ予防接種 2025年シーズンの展望とエビデンス

インフルエンザ予防接種 2025年シーズンの展望とエビデンス

明日より高齢者の方へのインフルエンザ予防接種も開始となります。昨日は、なるべくやさしくわかりやすいを心がけたインフルエンザのお話をしました。

今回は少し、難しい話もあるかもしれませんがデータなど入れたお話をしますね。

〜今年の流行状況とワクチンの効果について〜

はじめに

インフルエンザは毎年冬季に流行を繰り返す急性呼吸器感染症であり、日本国内でも数百万人規模の罹患者が発生しています。特に高齢者や基礎疾患を有する患者にとっては、重症化や死亡のリスクが高く、ワクチン接種による予防が重要です。

2025年シーズンは例年より早期にインフルエンザ患者の発生が確認されており、厚生労働省の定点報告でも8月下旬から増加傾向が見られています[1]。本稿では、インフルエンザの基本的な疫学、今年の流行状況、ワクチンの有効性と限界、副反応、さらに最新の研究データを踏まえ、医療従事者・一般市民双方に役立つ情報を整理します。


インフルエンザの基礎知識

ウイルスの種類と変異性

インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分類されます。

  • A型:最も流行規模が大きく、亜型(H1N1、H3N2など)によって大流行(パンデミック)を起こす。
  • B型:流行はA型より限定的だが、毎年一定数の患者が発生。Yamagata系統とVictoria系統の2系統がある。
  • C型:軽症例が多く、流行規模は小さい。

インフルエンザウイルスは抗原変異(ドリフト)を毎年起こすため、前年の免疫が十分に働かない場合が多く、毎シーズンの流行が繰り返されます。


流行の季節性と2025年の特徴

一般的な流行パターン

日本では例年12月頃から患者数が増加し、1月〜2月にピークを迎えます。しかし、ここ数年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、インフルエンザの流行時期や規模に変動が見られています。

2025年の流行傾向

  • 9月時点で既に患者数が増加

    2025年は例年より早い流行の兆候があり、秋の段階から学級閉鎖が報告されています。
  • 免疫ギャップの存在

    2020〜2022年はCOVID-19対策によりインフルエンザ流行が極めて小規模であったため、特に若年層において自然感染による免疫獲得が不十分となっています。これが流行の加速要因と考えられています。
  • 複数株の同時流行の可能性

    この夏の南半球(オーストラリアなど)では、インフルエンザA(H1N1)型が多く検出されました。このことから、日本でもこのA(H1N1)型が流行の中心となる可能性が指摘されています。

インフルエンザワクチンの有効性

ワクチン株の選定

ワクチン株は、世界で分離されたウイルス株とワクチン候補株の反応性や、ワクチン製造所における製造効率などを踏まえた総合的な見地から評価・選定されています。国内のインフルエンザHAワクチンについては、WHOの推奨事項及び製造販売業者での対応に要する期間等を踏まえ、2025-26 期以降は3 価のワクチンによる接種を前提として対応することとなっています。

2025-26 期のインフルエンザワクチンからは、3価ワクチンに変更となっています。
我が国における2025-26 期のインフルエンザワクチンは、以下の株からなる3 価ワクチンであり、2024-25 期から A/H3N2株の1 株が変更となり、B型株(山形系統)が除かれ
ました。
A 型株
A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)
A/パース/722/2024(IVR-262)(H3N2)
B 型株
B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)

  1.  
  2. 有効性に関するエビデンス
  • 発症予防効果:40〜60%程度と報告[2]。株の一致度によって変動がある。
  • 重症化予防効果:入院や死亡リスクを50%以上減少させるとの報告がある[3]。
  • 小児・高齢者での効果:小児では発症予防効果が比較的高い一方、高齢者では発症予防効果は低下するが、重症化予防効果は明確に認められている。

ワクチン接種の社会的意義

インフルエンザは学校・職場などで集団発生しやすいため、ワクチン接種は個人防御だけでなく集団免疫形成に寄与します。特に医療従事者や教育・保育現場で働く人の接種は、社会的な感染拡大防止に大きな役割を果たします。


接種対象とスケジュール

接種推奨対象者

厚生労働省では、以下の人々を重点的に接種対象としています。

  • 65歳以上の高齢者(定期接種対象)
  • 心疾患、呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を有する人
  • 妊婦
  • 小児(特に5歳以下)

接種回数

  • 13歳未満の小児:原則2回接種(2〜4週間の間隔をあける)。
  • 13歳以上の小児・成人:原則1回接種。

効果発現と持続期間

  • 接種後2週間程度で抗体価が上昇。
  • 免疫効果は約5か月持続するため、流行期に合わせて10〜11月の接種が望ましい。

副反応と安全性

主な副反応

  • 注射部位の発赤・腫脹・疼痛(10〜20%程度)
  • 全身性の発熱や倦怠感(数%程度)
  • 重篤な副反応は極めてまれ

アレルギーについて

かつては卵アレルギー患者での接種が問題となったが、現在のワクチン製造技術では重度の卵アレルギー患者でも安全に接種できることが多いと報告されています。ただし重度アナフィラキシー既往例では慎重な判断が必要です。


最新の研究と課題

高齢者における免疫応答低下

高齢者では免疫老化の影響でワクチン効果が低下することが知られています。そのため、高用量ワクチンやアジュバント添加ワクチンの研究が進んでいます。米国ではすでに65歳以上を対象とした高用量ワクチンが承認され、日本でも今後の導入が検討されています。

COVID-19との同時流行(ツインデミック)

新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念されており、診断・治療の混乱を避けるためにもインフルエンザワクチン接種は重要です。また、新型コロナワクチンとの同時接種も安全性が確認されており、効率的な予防が可能となっています[4]。

ユニバーサルワクチンの開発

毎年の株選定に依存しない「ユニバーサルワクチン」の研究が進んでいます。ウイルスの保存的な領域(HAステム領域など)に対する免疫誘導を目指した臨床試験が進行中であり、今後の実用化が期待されます。


実臨床でのポイント

  • 早めの接種:今年は流行が早いため、従来よりも前倒しの接種を検討すべき。
  • 重症化リスク層の把握:高齢者、基礎疾患患者、小児、妊婦への優先接種を徹底する。
  • 集団施設での接種推奨:介護施設、学校、保育園などでの集団接種体制の構築が望ましい。
  • COVID-19との同時流行対応:発熱外来における検査体制強化、両ワクチンの接種推進が必要。

まとめ

2025年シーズンは例年より早い時期からインフルエンザ患者が確認されており、大規模流行の可能性が懸念されます。ワクチンの発症予防効果は限定的ではあるものの、重症化予防効果は明確であり、社会的な感染拡大抑制にも寄与します。

高齢者や基礎疾患を有する患者、小児や妊婦、医療従事者などは積極的に接種を受けるべきであり、特に今年は早めの接種が望まれます。最新の研究では、より効果的なワクチンの開発も進んでおり、将来的には毎年の流行に左右されない予防が実現する可能性があります。

医療従事者は、最新のエビデンスを踏まえた情報提供と接種勧奨を行うことで、患者と社会の健康を守る重要な役割を担っています。


 

 

 

 

📌 参考文献

  1. 1.厚生労働省 感染症発生動向調査 インフルエンザ定点報告 2025年9月速報

  2. 2.CDC. Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness, 2024-2025.

  3. 3.Jefferson T, et al. Vaccines for preventing influenza in healthy adults. Cochrane Database Syst Rev.

  4. 4.WHO. Guidance on influenza and COVID-19 co-administration.

 

 

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かなざわ整形外科・婦人科

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院長 金沢 正幸

医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会リハビリテーション医
日本整形外科学会リウマチ医
日本整形外科学会スポーツ医
日本医師会認定スポーツ医
日本体育協会公認スポーツドクター

※婦人科は女性専門医が診察にあたります。

 

 

2025年09月30日